スティーブ・ジョブスの名言

「じっくり検討すれば、それ以上のものが欲しくなるはずです。」

　アップルを追放されたジョブズに復帰のチャンスが訪れたのは、アップルが新

しいＯＳを内部でつくるのではなく、外部から購入すると決断した時だ。

 

　ライバルは元アップル社員のジャン＝ルイ・ガゼー率いるビー社で、一時は採

用が決まりかけた。だが、ビー社のＯＳは開発途上という問題を抱えていた上、

ガゼーは一億ドルを要求し、プレゼンテーションもぞんざいそのものだった。

 

　一方、ジョブズは周到な準備を経て売り込んだ。得意のプレゼンで熱弁を振る

っただけではない。プレゼン後、ジョブズはアメリオを自宅に招いて夕食を共に

した。そしてネクストの財務諸表を差し出すと、こんな魅力的な提案をした。

 

「ネクストの中に役立つものがありそうなら、どんな契約にも応じます。ソフト

ウェアのライセンス、会社まるごとの買収、その他なんでもかまいません。じっ

くりと検討すれば、ネクストのソフトウェアだけでなく、それ以上のものが欲し

くなるはずです。会社全体、社員全員を買い取りたくなるでしょう」

 

　ネクストの買収はアップルでも大歓迎だった。ジョブズなら、瀕死のアップル

に正しい進路を指し示すことができるのではないか。結局、アップルが買い入れ

たのは、ジョブズを特別顧問とするネクストそのものだった。